顔面への攻撃を基本とする単鞭だが、単鞭下勢は陰部を目掛けて、掌を鞭のように浴びせる技である。
用法を説明してみよう。我は左構え。(下の写真1を参照)。
相手は右拳を順歩打ち(右拳前、右足前)で当方の顔面を狙って攻撃してくる。それを左サイドに交わしながら、右手で右拳を流すように受ける。(下の写真2を参照)
そして、左足を相手の外側に進めることにより、左掌を内側から相手の股間を狙い鞭のように打ち付ける。(上の写真3を参照)
簡易太極拳24式のベースになっている楊式太極拳の下勢は、仆步と呼ばれる非常に低い姿勢をとっているように思える。(下の写真4を参照)
ここで、ひとつの疑問が生じる。
楊式太極拳の下勢はどのような技なのだろうか?
中国武術において、低い姿勢をとる場合は大抵、不意打ちを狙った奇襲攻撃である。足を旋回させて、相手の足を引っ掛ける、または、大地の砂を掴むなどである。失敗すれば、ローキックで撃沈させられるか、寝技に持ち込まれる危険がある。低い姿勢を自ら取ることは、捨て身の攻撃に他ならない。
しかし、この一見すると隙だらけのポーズも、手の先から相手の喉元に伸びる剣が見えた時、凄みをもって見えてくる。(再び下の写真4を参照)
これは陳式太極拳の門派だった私が勝手に想像して、下勢の姿勢を真似ているに過ぎない。ひとつの使用法の可能性を示すためなので、ご容赦願いたい。
剣術、槍術、棍術、棒術など武器を持っていれば、低い姿勢はありだと思う。しかし、素手の格闘で寝技にも打ち込む意図がなければ、私の経験で言わせてもらうなら、低い姿勢はとらないほうが良いと思う。