太極拳の按は単なるプッシュではない。
按とは掤捋擠按の4番目の動作で、打のことである。
太極拳の按は下半身の纏絲勁により、強力な撃力を生み出す。
それでは太極拳の按を弓歩の姿勢で説明しよう。
威力のあるパンチは、早くて重いパンチと理解できよう。
理論的には、まず、相手に向かってワープする重心移動が起こる。
前回のブログで説明した骨盤の並進運動だ。
前足に体重が移ると、下半身の慣性力にストップがかかる。
そのストップのエネルギーが上半身を加速させ、
拳の握りにより、打撃のポイントに体重が集中する。
この動作をコントロールする中心が仙骨であり、
太極拳は纏絲勁でもって、全身の動きを統括する。
打は弓歩の姿勢で完成する。
後ろ足は外エッジが大地にめり込む形で膝を伸ばしストレートになる。
前足も外エッジが大地に食い込み、股関節が外旋した弓なりとなる。
太極拳の弓歩は、纏絲勁がきいたアーチの姿勢である。
纏絲勁の中心が仙骨であり、仙骨は丹田の意によって動いている。
撃力を生み出すわずか時間に、仙骨は立体的に、ダイナミックに動く。
これが內勁と呼ばれるものである。
この內勁を獲得していないと、太極拳の技で戦うことはできない。
内勁を学ぶには、内勁を獲得されている師匠と出会うことである。
そして、その師匠が伝統の技を、用法も含めて継承されていることが望ましい。
掤捋擠按のそれぞれの動きに、内勁があり、纏絲勁がある。
次回は、最初の動きである掤を解説したい。