太極拳の弓歩と掤捋擠按(3)

弓歩 並進運動 太極拳
Bow Stance Walk – Translational Motion

 

太極拳において擠(じー)とは一挙に相手との間合いを詰めることだ。

相手の正中線を取る動作で、歩法のワープが含まれている。

敵の拳や、顔が瞬時に目の前に現れるほど、怖いことはない。

 

それでは、説明しよう。

 

太極拳で、たまに、歩法の動きを誇張した型を見かけることがある。

まるで、足を振り出すタイミングや、方向を知らせようとしているみたいだ。

このような型をみるたび、太極拳の伝統はなくなりつつあると思ってしまう。

本来、歩法は相手に悟られてはいけないのが、武術である。

 

太極拳では、相手の正中線に押し入る動作を擠(じー)と表現する。

「擠」の言葉には、「押し込む」といった意味がある。

太極拳では、相手の姿勢を崩しながら、押し入るイメージだろうか。

しかし、私はもう少し広い意味で「擠」を解釈している。

 

擠(じー)は相手の体の一部に触れながら、押し入るだけではない。

相手に触れることなく、一挙に空間を詰める場合も同様である。

重心(丹田)が移動を始めてから、前足に体重の半分が移るまでが擠だ。

 

擠の動作で、大切な教えがふたつある。

丹田の内勁により重心移動が始まり、足が出る。

足が先に動いてはダメだ。

骨盤が回転しないで移動する、並進運動の時間が存在する。

(トップの写真を参照)

 

氷の上を滑るように、重心が水平移動する。

太極拳の型(套路)はゆっくりと動くので、並進運動の距離は小さい。

しかし、実戦で相手が後退すれば、この距離は伸びる。

このテレポーションの基本動作ができていないと実戦で通用しない。

 

この並進運動が、次にくる腰(骨盤)の立体的回転運動を強力にする。

これについては、次回の按(あん)で説明しよう。

 

太極拳の型(套路)は弓歩の繰り返しであり、掤捋擠按が基本となる。

今回は、弓歩の3番目の動作である「擠」を説明した。