太極拳は、拳打ではなく掌打を多用する。
しかし、拳で殴打するほうが威力あるのでは?
このように思われている方はいないだろうか?
それでは、疑問にお答えしよう。
理由は、脳に衝撃を与えるのは、拳打より掌打が有効だからだ。
この一言に尽きる。
脳は、頭蓋骨で保護されているが、豆腐の柔らかさと言われている。
1.5kg程度の柔らかい物体が、頭蓋の中で、髄液に浮いている状態。
これに衝撃を与え脳震盪を起こさせるには、掌が適しているということだ。
太極拳の掌は、ボクサーのグローブを着けたパンチと似ているかも知れない。
ボクサーは、顎を狙うことにより、KOが取れることを知っている。
ストレート、フック、アッパーなどで、顎を狙い脳への衝撃を増大させる。
しかし、太極拳の掌打はもっと多彩で変化に富んでいる。
顔面、側面、あらゆる角度から脳に衝撃を与える技法がある。
これが、最も優れた、太極拳の武術的特徴ではないだろうか。
「勁でもって、胸を両手で押し、相手を弾き飛ばす」
もし、太極拳にこのようなイメージを持たれているとしたら、
文打としての余興が、一般的に定着しているのかも知れない。
武打は、一般的に、人前では行わないものである。
太極拳の掌打は、相手を脳震盪でスマートに倒すために存在している。