太極拳の弓歩と掤捋擠按 (2)

太極拳弓歩の歩法 掤捋擠按
Bow Stance Walk 2 捋

 

太極拳は大衆化とともに、失われてしまった伝統がいくつかある。

弓歩で前進する場合、一旦、後ろ足に体重を戻し、

前足の踵を起点に回転している。 これは伝統だろうか?

 

では、説明しよう。

 

北派の中国武術では、順歩の追い突きが攻撃の基本となる。

弓歩、弓歩、弓歩の連続した前進である。

この場合は、前足に重心を残したまま、前進する。

回転の接地面は、足指と付け根の部分である。

 

体重を足に乗せながら回転させる場合は、踵は軸にならない。

 

太極拳の歩法は手と足が連動している。

 

ステップを進める場合、手の動きは、捋(りゅー)となる。

捋とは、掤捋擠按(ぽん・りゅー・じー・あん)の捋である。

捋の言葉の意味は、「撫で付ける」といった感じであろうか。

 

捋の手の動きに呼応して、前足の膝と股関節が外旋していく。

こと時に、足指が活きていることが重要。

(写真を参照)

この動きにより、踏み出すエネルギーを蓄積する。

これは、太極拳における、弓歩の歩法の基本である。

 

大衆化された太極拳では、踵で回転することが常識化しているようである。

そのためには、一旦、体重を後ろ足に戻さなければならない。

なぜ、こんなふうになってしまったのだろうか?

 

太極拳から武術の伝統が少しずつ消え去ろうとしている。

悲しいかな、これが今の大衆化された太極拳の現実だろう。

 

軸足を回転させる時、指先と付け根を使うのは、武術の常識と言える。