太極拳は北派の武術であり、打のスタンスは弓歩を基本とする。
型(套路)のほとんどが、この弓歩(きゅうほ)の繰り返しとなる。
弓歩(弓步)をマスターしないと太極拳の掌打で人を倒すことはできない。
それでは、説明しよう。
弓歩(弓步)とは、本来、弓箭歩(きゅうせんほ)と呼ばれていた。
しかし、今日では、弓歩(きゅうほ)と省略されることが多いと思う。
弓箭歩の名称の由来は定かでなない。
短い矢を射る時の立ち方だったのだろうか?
または、前足が弓のように曲がり、後ろ足が矢のように直線だからだろうか?
弓歩は一回では語り尽くせない。今回は、立ち位置と姿勢に注目する。
正しい弓歩を学ぶには、まず足の立ち位置を頭に叩き込むことが大事だ。
力の方向を示す直線ラインを床(大地)に想定する。
後ろ足は、踵をライン上に置き、大体45度に開く。
前足は、親指のつま先をライン上に置き、大体45度に合わせる。
前足は股間節が開いた張りのある状態(股関節の外旋)で、体重が乗っている。
後ろ足は、膝を伸ばした状態で、大地を踏ん張る。
これらを操作しているのが、仙骨で、ラインと平行に近づくようにする。
体重の掛け方は、前足に70%、後ろ足に30%の比率がよい。
前足は体重移動のストッパーの役目となる。
膝頭がつま先より前に出ることはありえない。
後ろ足は、大地のエネルギーを打撃ポイントに伝える軸となる。
太極拳の弓歩は逆腰(後腰が外旋する)を基本とする。
掌であれ、拳であれ、打撃のポイントは、このライン上にある。
拳先(打撃のポイント)、鼻先、前足の親指がライン上でなければならない。
これを、三尖相照(さんせんそうしょう)と言う。
三尖相照は伝統の教えであり、弓歩(弓步)を学ぶ上で必須の原理だ。
この力学原理が体感できなければ、弓歩を会得しているとは言えない。
言い換えれば、威力のあるパンチや掌を打つことはできない。
太極拳の弓歩は、順歩(前足と同じ側の手)で打つ場合も、
拗歩(前足と逆側の手)で打つ場合も同じ足位置を取る。
順歩の例として単鞭を、拗歩の例として玉女穿梭の写真を上げておく。
どちらも、同じライン上で、同じ足位置となっている。
これは力学原理であり、太極拳も三尖相照の伝統を引き継いでいる。