太極拳は全身が連動した動きを基本とする。
その状態を最も的確に表現してる言葉がある。
上下相随(じょうげそうずい)である。
では、説明しよう。
太極拳は超スローで動いても、全身のつながりが途切れることはない。
それは、纏絲勁(てんしけい)の運動連鎖で動いているからである。
運動連鎖は単調ではなく、陰陽の理論に基づく。
左右の動きも、上下の動きも、対称となることはない。
手の動きが、足の動きを誘発し、足の動きが手の動きを誘発する。
四肢はそれぞれ、異なるタイミングで、連動して動いている。
これが、上下相随と言われる所以だ。
両手の指は、背中を抜くことにより、つながった動きとなる。
左右の動きは対称でなない。
陰陽とは、右が陰であれば、左は陽となる。
太極拳ではこれを分虚実と呼ぶ。また、虚実は、転換する。
では、上下はどうか?
上下も同じである。
四肢は丹田を中心にして、纏絲勁による運動連鎖で動いている。
上下においても虚実転換は行われている。
歩法は無極にて、虚実を踏む。
虚の足は軽く、実の足は硬い。
武術は重くて鈍い足であってはならない。
太極拳は比較的低い姿勢をとるが、重くて鈍い足では決してない。
纏絲勁は常に生きている。
靴の中の指は想像以上に動いていると認識してほしい。
運動連鎖に対して動きが遅いイメージを持たれている人がたまにいる。
しかし、鞭の先端の動きは、人間の反射神経の域を超えている。
運動連鎖とは加速するものである。つながることは、スローではない。
太極拳はあえてスローに動くことで、精巧な運動連鎖を獲得していく。
上下相随は四肢の先端が霊活した状態で虚実転換でつながった状態だ。
上下相随とは、頭頂に神気が貫いた意によってのみ動きが可能となる。