顔面へのストレートパンチをあなたはどのようにかわしますか?
後ろに下がる。横にかわす。斜め前にでる。
いずれにおいても、鉄則がある。それは、二目平視(にもくへいし)である。
なぜ、この二目平視が重要なのか語って見よう。
二目平視とは、両目を水平に保つことである。
太極拳は、ボクシングのように顔を傾けてかわすことはしない。
太極拳のカウンター打ちは、ボクシングとは少し異なる。
また、空手のように相手のパンチを跳ね上げて打つようなことはしない。
二目平視で、相手のパンチを自分の頬にはつらせる感じで横にさけながら前にでる。
同時に、相手のパンチに左手を添えながら、自分の頬に導き入れる。
これで、相手のパンチは当たらなくなる。
なぜ二目平視が重要かというと、相手から見るとターゲットが消える。
二目平視の動きは、中心軸を消す動きを誘発させる。
捉えたと思った正中線が消えるのであるから、相手の脳は錯覚を起こす。
私が太極拳を学び始めたのは、80年代初頭である。
相手は薄いグローブを着け、軽く握った状態でパンチを打つ。
それを、顔面でかわす練習をひたすら行う。
当時を思い出すと、鼻の中は血で常に固まっていたように思う。
やがて、静的動きのなかで、タイミングの駆け引きができるようになる。
そうすると、「先の先」のタイミングが読めるようになるので、顔面にパンチを当てられる確率は小さくなっていく。太極拳で戦えるようになるには、ある程度の年月は必要だ。
今の時代、こういった荒っぽい教授方法はなかなかできないと思う。
そういった意味で、私は時代的に恵まれていたのかも知れない。
相手のパンチを引き込み、一寸でかわすには二目平視の動きが必要となる。
最小の動きで相手の攻撃を見切り、ターゲットを消す。一寸の見切りである。
二目平視の教えには、このような意味が含まれている。
二目平視が鉄則などと書くと、次のような反論がきそうなので補足しておく。
ボクシングは、スウェーしながら顔を傾け、巧みに相手のパンチを避ける。
これは、ルールの中で発展してきた、非常に洗練された動きであると認めている。
ただ、蹴り技などの下からの攻撃があるルールでは、あまり使えないのではないだろうか。