太極拳の動きは、各関節が揺動支点として働き、支点が順次移動することで、効率的な力の伝達を可能にします。外三合を意識することで、上半身と下半身が分離することなく、全身がシステムとして統一された力を生み出すことができます。
本ブログは2020年8月に書いた「太極拳の力学原理 勁は気ではない」と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。
それでは、太極拳の柔らかで流れるような動きで、なぜ鋼の力が生み出せるのか秘密に迫りたいと思います。
太極拳は下丹田を起点にした力を背骨で増幅させ、この体幹の動きで四肢を操作します。
体幹から手への力の伝達は、肩、肘、手首(小天星)の運動連鎖であり、これら三節が揺動支点として重要な役割を果たします。 これに対比されるのが、脚の運動連鎖です。体幹から足への力の伝達は、股関節、膝、足首の三節が揺動支点となり、体幹から足へ力が伝達されます。
全身の力として効率よく力を出力するためには、上半身と下半身の連携が不可欠です。 力が伝わるタイミング、つまり関節が揺動支点となるタイミングが上下で揃うことです。 外三合の理論は、上下の三節である、肩と股関節、肘と膝、手首(小天星)と足首が同じタイミングで運動エネルギーが通過すると同時に、回転を含む力の伝達方向を決定付けます。 このように揺動支点の役割は重大で、全体の力学的バランスと安定性に影響を与えます。
理論だけ聞いても、イメージが掴めないと思いますので、馬歩の姿勢による太極拳の逆転雲手動作で説明します。太極拳は分虚実と言って、虚と実の状態を明確に分けます。
写真は右手と右足が実状態、左手と左足が虚状態となり、外三合とは実側の三節を上下合わせることを意味しています。
揺動支点のタイミングを3枚の写真で示します。
外三合1 揺動支点ペア1:肩関節と股関節
外三合2 揺動支点ペア2: 肘関節と膝関節
外三合3 揺動支点ペア3: 手首(小天星)と足首
このように上下対の揺動支点が同じタイミングで移動していくことで、全体のシステムに調和が生まれます。この力の調和が、手が相手に接触した時、反発されることなく力を相手に作用させるのです。これを中国武術では浸透勁と言います。
下半身姿勢を固定して上半身の力だけで相手をプッシュしても、浸透勁は生まれません。
腕と脚の力の流れが調和して初めて、相手に反発させない力の流れを可能にします。
このように、外三合の理論は全身の運動連鎖の力のタイミングの取り方を正しくするように教えてくれます。
私の初級クラスのレッスンでは雲手を基本にして、足踏みをさせながら腕と脚が連動することを教えています。 足踏みをしても下丹田の位置は上下しません。