今の時代、太極拳の伝承者に出会えるのは奇跡に近いと思う。
太極拳との出会いは偶然だった。
24歳で門下生となり、20年間を武術の修行に明け暮れた。
時は流れ、この歳になり、健康体操として再開している。
「ひとつのエンジンで全身を動かす」
ただこれだけの動きなのだが、伝統が受け継がれている。
本物に出会い、触れ、学ぶことができたことに感謝している。
こんどは、この素晴らしさを伝えていきたいと思う。
折り返し角度から入る掌打 「摟膝拗步」

太極拳は、戦う時に顔面への掌打を多用する。
掌打は外傷無傷で、脳震盪を起こさせ、人を倒す合理的な打法だ。
搂膝拗步(ろうしつようほ)は顔の側面から殴打する技。
掌打が平手打ちや、びんた程度の技なら、武術ではなく伝統でもない。
肋骨狙いのやばい蹴り 「分脚」

分脚は靴のつま先で蹴るので、ストリートファイトでは効果を発揮する。
蹴り足は虚のまま腰の力で上げ、軸足の脚力と骨盤の力で突き刺す。
パンチを出した反動でも蹴れるので、太極拳では多用される。
鞭のようにしなる掌打 「単鞭」

太極拳において、掌打のバリエーションは多い。
単鞭(たんべん)は、顔面に鞭のようにピシャと掌を浴びせる技。
鼻にまともに当たれば鮮血が止まらず戦意を喪失させる。
眼球に当たれば一瞬、目が見えなくなる。
太極拳では有名な技だが、実戦で使える人は、少ないように思える。